今日は僕のとっておきの宝物について話そうと思う。たいした話じゃないが、まあ聞いてくれ。
僕の宝物は、クロムハーツのブレスレットだ。なんだそんなもの、ただのアクセサリーかよ、と思うかもしれない。たしかにそう、ただのアクセサリーだ。それ以上でもそれ以下でもない。じっさいのところ、これは僕にとってたいした問題にはならない。たとえばそれが、安い中国製のアルミみたいなブレスレットでもいいし、なんなら腕時計でもいい。肝心なのは、そこに付随するエピソードだ。誰しも人生のあらゆるものに共通するように、このときもまた重要なのは、その物自体ではなく、エピソードだ。
でも、けして特別にみえるエピソードではないかもしれない。
一言で言い表せる。それは僕がこの世で一番好きな人から買ったブレスレットだ。これでおしまいである。なんにもおまけのエピソードはついてこない。べつに詐欺ではない、そういうお話なのだから仕方あるまい。
彼女はあの町でクロムハーツを販売していた。僕はその店をたまたま通りかかり、彼女に恋をした。そして彼女に勧められたブレスレットを買った。クロムハーツを販売していることがどれだけのステータスかも分からないし、彼女のことは何も知らなかったし、今のところあれからただの一度も会えたことはない。
でも分かるのだ。僕にとっては彼女こそきっと運命の女性だったのだ。
そして今彼女と僕をつなぐものは、この手元に残ったクロムハーツのブレスレットだけになってしまったのだ。悲しいことに。でも思う。
だから、宝物なんだろう、と。それだけの、つまらないお話である。